心が疲れているときに腸も疲れている理由【分子栄養アドバイザーによる大人のイキイキ腸活通信vol24】

なんだか心が疲れたと、感じたことはありますか?


最近は特に、生活がガラッと変わった方や、様々な不安を抱える方も多いように感じます。もしも、「気分が落ち込む、不安を感じやすい、以前よりもストレスに弱くなった、イライラしやすい」などと感じる時は、ゆっくり体を休めて、そしてぜひ腸に優しい生活をしてあげてください。

腸内フローラが乱れると、心が疲れてしまう


善玉菌は、私たちの心を健康に保つサポートをしてくれています。具体例をいくつか紹介します。

・善玉菌が作り出す神経伝達物質(セロトニン、γ-アミノ酪酸)は、心のバランスを保つために重要です。善玉菌が減ってこれらが十分に作られなくなることで、うつ病の再発を招くという報告もあります(Nutr Rev. 2020 May 1;78(5):394-411.)。

・幸せホルモン(セロトニン)の材料であり、うつ病とも関係するトリプトファンを、ヒトは体内で合成できません。お食事(肉や魚や卵などのタンパク質)、そしてトリプトファンを合成できる一部の善玉菌に、供給を頼っています。

・ビフィズス菌(善玉菌の一種)は、ストレスへの耐性を強めます(亢進したHPA応答を抑制する)(J Physiol. 2004 Jul 1;558(Pt1):263-275)。

食物繊維の摂取は、慢性炎症を軽減させます(腸内のpHと、腸の透過性の両方を低下させることによって)。うつ病では、炎症を表す数値(CRP,IL6, アディポネクチンなど)が高いという報告もありますから(Nutr Rev. 2020 May 1;78(5):394-411.)、炎症を軽減することは、心の健康に役立ちそうです。
なお、慢性炎症は病気ではないのですが、日常的に体のどこかで小さな火事が起き続けているような状態です。この火を抑えようと、免疫系は働き続け、体には常に負担がかかっています。

・鶏が先か卵が先か不明確ではありますが、気分の落ち込みによって、質の悪い食品への渇望が生まれることもあります。質の悪い食品とは、例えば加工食品です(ほとんどの加工食品には、食物繊維を始めとした栄養素がほんの少ししか入っていません)。心のバランスが崩れ、食生活が崩れていくと、どんどん負のループに陥ってしまいます。

心の疲れは、腸にもストレスをかける

反対に、心が感じたストレスが、腸内環境を悪くすることもあります。例えば、


・交感神経優位な状態では、副交感神経系の支配下にある胃腸は動きません。
・精神的ストレスによって(生じたカテコラミンは)、悪玉菌を増殖させます(福岡医誌 100(9):298―304,2009)

なんだか心が疲れたと感じるときは、ひと息ついて、あなた自身とあなたの腸を、いたわってあげてくださいね。皆さまの心と体が、いつも健康で安全でありますように。

この記事を書いた人

table project代表 分子栄養アドバイザー 
夏木彩早 
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九州大学卒業。臨床分子栄養医学研究会認定指導カウンセラー。長年のニキビや腸過敏で悩み、健康食を研究しまくった末、分子栄養学に出会う。「体調不良に邪魔されず、自分らしく生きる人」を増やすべく、2018年に起業。延べ500名に、科学的な健康食を伝えてきた。現在は、分子栄養学をベースに考案した「個人差食事メソッド」を使い、不調に悩む女性や、専門家向けの講座を運営。天神ホリスティックビューティークリニックでの栄養指導等もおこなっている。